Love Song 〜我儘な天使〜《1》
Love Song 〜我儘な天使〜
Track-01
空に手が届く。
ここを訪れた者は、必ずそう言って感嘆の声を洩らしながら苦笑することだろう。
地上70階の社長室は全面がガラス張りにされていて、遥か彼方に映る都会の喧騒や猥雑な街並が一望できる。
ここ臨海副都心に悠然とそびえ建つ近代的な高層ビル────。
今や日本の音楽メディアシーンを表と裏から操っているプラチナリミックスミュージックジャパンの本社ビルである。
「……REMAX?」
男は無愛想な低い声で呟いた。
黒御影の大きな社長用の執務机に腰を寄り掛からせて腕組みしたまま、磨かれたガラス越しの東京湾を眺めている。
優に180cmを超える均整の取れた長身を、仕立ての良いイタリアンブランドのスーツに包んでいる姿はまさに映画俳優というところだ。
オールバックに撫で付けられた黒髪と冷徹な瞳。年齢は30代後半というところか。
「───ああ、先月うちとメジャー契約した新人バンドだ」
黒革張りの社長執務席に座ったスーツ姿の青年がニッコリと微笑んだ。
プラチナリミックスミュージックジャパンの代表取締役社長・高槻桂(たかつき・けい)その人である────。
10年前に父親の前社長・高槻修一郎が病気療養で退任し、24歳でこの高槻グループを継いだ青年実業家だ。これから本格的な世界展開を進めようとしているプラチナリミックスミュージックをこれ程までに巨大化させた張本人である。
「渋谷のライブハウスで桜井君が偶然発掘してね。インディーズではそこそこ人気のあるバンドだったらしい」
そう言うと高槻は、黒御影の執務机の上にあった資料を男のほうへ滑らせた。
クリップでいちばん上に留められている写真には、いかにも女子高生受けすると思われるルックスの若者が写っている。
男は興味無さそうに一瞥すると、スーツの内ポケットから煙草を取り出して火を点け、紫煙を燻らせはじめた。
「色モノ……か?」
「いや、確実に実力を備えている。……とは言っても、“音”としてはまだまだ荒削りなところはあるけど」
頬杖を付きながら、高槻は柔らかな眼差しで男の横顔を覗き込んだ。
「───ボーカルの声質、声域には僕も驚かされたんだけど、目を見張るものがあるんだ。その上、彼は中々いい曲を書いてる」
男は煙草を灰皿で捻り消すと、高槻のほうに視線を向けた。
「……で? 俺をここに呼んだ理由を聞かせて貰おうか? 桂」
高槻は驚いたような顔をしたが、すぐに流麗な社長の顔に戻って口を開いた。
「君に彼らを任せたい、と言ったら?」
【To be continued】
Track-01
空に手が届く。
ここを訪れた者は、必ずそう言って感嘆の声を洩らしながら苦笑することだろう。
地上70階の社長室は全面がガラス張りにされていて、遥か彼方に映る都会の喧騒や猥雑な街並が一望できる。
ここ臨海副都心に悠然とそびえ建つ近代的な高層ビル────。
今や日本の音楽メディアシーンを表と裏から操っているプラチナリミックスミュージックジャパンの本社ビルである。
「……REMAX?」
男は無愛想な低い声で呟いた。
黒御影の大きな社長用の執務机に腰を寄り掛からせて腕組みしたまま、磨かれたガラス越しの東京湾を眺めている。
優に180cmを超える均整の取れた長身を、仕立ての良いイタリアンブランドのスーツに包んでいる姿はまさに映画俳優というところだ。
オールバックに撫で付けられた黒髪と冷徹な瞳。年齢は30代後半というところか。
「───ああ、先月うちとメジャー契約した新人バンドだ」
黒革張りの社長執務席に座ったスーツ姿の青年がニッコリと微笑んだ。
プラチナリミックスミュージックジャパンの代表取締役社長・高槻桂(たかつき・けい)その人である────。
10年前に父親の前社長・高槻修一郎が病気療養で退任し、24歳でこの高槻グループを継いだ青年実業家だ。これから本格的な世界展開を進めようとしているプラチナリミックスミュージックをこれ程までに巨大化させた張本人である。
「渋谷のライブハウスで桜井君が偶然発掘してね。インディーズではそこそこ人気のあるバンドだったらしい」
そう言うと高槻は、黒御影の執務机の上にあった資料を男のほうへ滑らせた。
クリップでいちばん上に留められている写真には、いかにも女子高生受けすると思われるルックスの若者が写っている。
男は興味無さそうに一瞥すると、スーツの内ポケットから煙草を取り出して火を点け、紫煙を燻らせはじめた。
「色モノ……か?」
「いや、確実に実力を備えている。……とは言っても、“音”としてはまだまだ荒削りなところはあるけど」
頬杖を付きながら、高槻は柔らかな眼差しで男の横顔を覗き込んだ。
「───ボーカルの声質、声域には僕も驚かされたんだけど、目を見張るものがあるんだ。その上、彼は中々いい曲を書いてる」
男は煙草を灰皿で捻り消すと、高槻のほうに視線を向けた。
「……で? 俺をここに呼んだ理由を聞かせて貰おうか? 桂」
高槻は驚いたような顔をしたが、すぐに流麗な社長の顔に戻って口を開いた。
「君に彼らを任せたい、と言ったら?」
【To be continued】
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