君の瞳を逮捕するっ《26》

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「そっかぁ、オフクロの味ってやつ?」
玲司が羨ましそうにそう呟いた。
「す、すみません……無理なことお願いしちゃって……」
「何言ってんだよ、そんなことないさ。そういう素敵な思い出があるなら大切にしないとな」
閉じられたメニューを受け取りながら、玲司が片目を瞑ってニッコリと笑った。
「うん、たまにはいいかもな。じゃ、俺もオムライスを頼む」
昔ながらの懐かしさを思い出したように、早瀬も翼と同じメニューを注文した。
「ほぉー。へっへっへー、天下の警視庁ソウイチの星が『オムライス』ですかぁ?」
「う、うるせぇよ、早く作ってこいっつーのっ!」
「よーしっ。んじゃ、今夜はこの玲司様がとびきりの腕を振るっちまうか」
「うん、そうだね。じゃあ僕達も今夜は一緒にオムライスにしようよ」
「おっ、いいねぇっ! んじゃ、今夜は『はじめまして翼くん☆オムライス・パーティー』ってことにするからな」
「はいはい、了解」
「よっしゃーッ! オームライスっオムライスぅ、たまねぎピーマンどこかいなっ」
そう言いながら腕まくりをすると、鼻歌混じりの玲司の後ろをクスクスと小さく笑った瞬がついていくように、カウンターの奥の厨房へと消えていった。
「やれやれ……」
後に残された早瀬と翼のふたりには、やっと穏やかな静寂が訪れた。
「ご、ごめんな、翼くん……何だか騒々しい店で……」
早瀬はスーツの内ポケットから煙草を取り出すと口に咥えて火を点けた。
「え? どうしてですか? そんなことありませんよ」
「へ?」
「あ、あの……とっても素敵なお店だと思います……僕。あ……玲司さんも瞬さんも……何だかとっても……温かいなぁ…って」
どうやら翼がこの『三匹の子猫』を気に入ってくれたようなので、早瀬はホッと胸を撫で下ろした。
もっと改まった店のほうがいいかとも考えたが、こじんまりとしていて家庭的に和気靄々とした雰囲気のほうがいいだろうとこの店を選んだのだ。
「そうか。気に入ってくれてよかった」
「あ……はいっ……有難うございます」
屈託のないとびきりの笑顔…――。
まだあどけなさの残る柔らかそうな頬を薔薇色に染めて、にっこりと微笑んだ翼が何だかとても眩しくて、早瀬は高鳴っていく鼓動を静めるように慌ててレモン入りのお冷やで喉を潤した。
鎮まれ鎮まれ、と何度も心の中で呪文のように呟いてみても、更に胸の高鳴りは激しくなっていくだけだった。
レモンは初恋の味、なんて死語までもがふと脳裏に浮かぶ。
これじゃ、まるで中坊の純情初デートのようである。
「……あの…早瀬さん?」
「えっ!?」
いきなり翼に顔を覗き込まれて、早瀬は思わず咥えていた煙草を落としそうになってしまった。
「あ…あの……やっぱり……僕なんかが急にお邪魔したら…その……ご迷惑なんじゃ……?」
「え?」
何か言いたいことがあるように口籠った翼の顔を、早瀬がきょとんとしながら見つめた。
「あ…あの……で、ですから……ご家族とか………奥さん…とか……」
「ああ、何だ。そういうことか」
「え?」
翼が何を心配しているのかがハッキリしたので、思わず早瀬の顔には笑みが零れる。
「それなら心配はいらないさ……ほら」
そう言いながら、早瀬は翼の前に左手の甲をかざして見せた。
大きくて骨ばった男らしい手。
その手の薬指に結婚指輪はなかった。
「あ……」
「そ、その……俺は…独身でひとり暮しだからさ。何にも気兼ねすることはない…って訳さ」
「ご、ごめんなさい……僕……失礼なこと聞いちゃって……っ」
慌てて謝った翼の顔は、林檎よりも真っ赤になってしまっていた。
「あ……いいんだよ、別に……あはは、は……」
照れたように早瀬が笑うと、向かい合って座っているふたりの間には再びじれったいくらいの静寂が訪れた。
何だかまるでお見合いのようだ。
「あ、あの……」
しばらくすると、翼が思い切ったように口を開いた。
「え?」
「あの……僕……友達と連絡取りたいんですけど……まだ荷物返して貰ってなくて……携帯もその中で……」
「ああ、そうか」
【To be continued】
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■SHINOBI―忍―














