麗しの小悪魔 第1話:謎の転校生《2》
「ファーラは魔力の他にも特殊な能力をいくつか持っていますから、瑞希さまの護衛くらいは任せられるでしょう」
「へぇー、特殊な能力かぁ……凄いね、ファーラ」
瑞希は大きな瞳を輝かせて、フワフワのファーラを抱き上げた。
こんなに小さくて可愛らしい子猫に護衛なんてできるのだろうか、と疑問に思うけど。
「それから、周囲には私と瑞希さまは従兄弟同士で、アメリカから帰国した、ということにしてありますので、お忘れなく」
「うんっ。従兄弟同士かぁ……って、僕の従者だって言っちゃ駄目なの?」
「当たり前ですっ! それがバレないようにするんですからっ!」
エノルの剣幕に思わず瑞希は後退った。
「わっ、わかったよぉ……もぉ」
そんなに怒鳴んなくてもいいじゃん、と瑞希が口を尖らせる。
「あ、あのにゃ、瑞希さま。お取り込み中だけど、もぉ家を出ないと学校に間に合わないにゃ」
「え?」
困惑した顔のファーラにそう言われ、慌てて壁掛時計を振り返ると、既に家を出る時間を過ぎていた。
「えぇ──ッ! ヤ、ヤバッ! じ、じゃ、行ってくるねっ、エノルっ」
椅子に掛けてあったカバンを肩に掛け、そのまま慌てて走り出す。
「瑞希さまっ、魔法は絶対に禁止だと言うことをくれぐれも忘れないで下さいっ」
「はいはいっ、判ってるよぉーッ! 行ってきまーすっ!」
ブンブンと手を振る瑞希の後をファーラが慌てて追いかける。
「ファーラ、瑞希さまを頼みましたよ」
「はいにゃ、エノルさまっ」
騒々しく走り去っていくその姿を見送ったエノルは、ふっと小さく溜息を吐いた。
「……やれやれ、こんなんでこの先本当に大丈夫なんだろうか?」
初めて人間界にやってきた瑞希さま…―――。
『魔界の後継者』としてこれから此処で成し獲なければならないことを理解しているのだろうか。
そして、必ず現れるであろう『闇の存在』である彼等のことも…―――。
こうして居る間にも、彼等は既に瑞希さまを探して人間界に来ている筈だ。
何としても、瑞希さまを奪われることだけは阻止しなくてはならない。
「……油断はしていられない、ということか……」
そう呟くと、エノルは凛とした蒼い瞳で窓越しに外の眩しい青空を見上げた。
◇◇◇
「……ったく、エノルったらさぁ……人間界に来た途端、魔界にいる時よりも厳しくなったみたいなんだけどなぁ」
ブツブツと独り言を呟きながら、瑞希は駅に向かって走っていた。
「それは仕方ないにゃ。人間界は魔界と違って色々と危険も多いしにゃ……それに、エノル様だって瑞希さまのことが心配だから厳しくするんじゃないかにゃ」
ファーラが瑞希の横に並び、宙を駆け走りながら言った。
「わあぁッ! フ、ファーラッ! ど、どこ走ってんのッ!?」
エノルに魔法を使うことは禁止されているのに、これじゃ明らかに違反である。
まして、こんなところを人間に見られたりしたら大変なことになるだろう。
「ああ、心配ないにゃ、瑞希さま。これは魔法じゃなくて精霊の特殊な力だにゃ。それに、我々精霊の姿は人間には全然見えないにゃ」
「えっ!? そ、そうなんだ……」
「まぁ、中には稀に見える能力を持っている人間もいるけどにゃ」
「ふぅーん」
改めて精霊の不思議な力を知った瑞希である。
「あっ! 駅だにゃ、瑞希さまっ。あそこから電車に乗るにゃ」
「よ、よしっ! 行くよっ、ファーラッ!」
「はいにゃっ!」
初めての電車に緊張しながらも、瑞希は朝のラッシュアワーの中に駆け込んでいった。
【To be continued】
「へぇー、特殊な能力かぁ……凄いね、ファーラ」
瑞希は大きな瞳を輝かせて、フワフワのファーラを抱き上げた。
こんなに小さくて可愛らしい子猫に護衛なんてできるのだろうか、と疑問に思うけど。
「それから、周囲には私と瑞希さまは従兄弟同士で、アメリカから帰国した、ということにしてありますので、お忘れなく」
「うんっ。従兄弟同士かぁ……って、僕の従者だって言っちゃ駄目なの?」
「当たり前ですっ! それがバレないようにするんですからっ!」
エノルの剣幕に思わず瑞希は後退った。
「わっ、わかったよぉ……もぉ」
そんなに怒鳴んなくてもいいじゃん、と瑞希が口を尖らせる。
「あ、あのにゃ、瑞希さま。お取り込み中だけど、もぉ家を出ないと学校に間に合わないにゃ」
「え?」
困惑した顔のファーラにそう言われ、慌てて壁掛時計を振り返ると、既に家を出る時間を過ぎていた。
「えぇ──ッ! ヤ、ヤバッ! じ、じゃ、行ってくるねっ、エノルっ」
椅子に掛けてあったカバンを肩に掛け、そのまま慌てて走り出す。
「瑞希さまっ、魔法は絶対に禁止だと言うことをくれぐれも忘れないで下さいっ」
「はいはいっ、判ってるよぉーッ! 行ってきまーすっ!」
ブンブンと手を振る瑞希の後をファーラが慌てて追いかける。
「ファーラ、瑞希さまを頼みましたよ」
「はいにゃ、エノルさまっ」
騒々しく走り去っていくその姿を見送ったエノルは、ふっと小さく溜息を吐いた。
「……やれやれ、こんなんでこの先本当に大丈夫なんだろうか?」
初めて人間界にやってきた瑞希さま…―――。
『魔界の後継者』としてこれから此処で成し獲なければならないことを理解しているのだろうか。
そして、必ず現れるであろう『闇の存在』である彼等のことも…―――。
こうして居る間にも、彼等は既に瑞希さまを探して人間界に来ている筈だ。
何としても、瑞希さまを奪われることだけは阻止しなくてはならない。
「……油断はしていられない、ということか……」
そう呟くと、エノルは凛とした蒼い瞳で窓越しに外の眩しい青空を見上げた。
◇◇◇
「……ったく、エノルったらさぁ……人間界に来た途端、魔界にいる時よりも厳しくなったみたいなんだけどなぁ」
ブツブツと独り言を呟きながら、瑞希は駅に向かって走っていた。
「それは仕方ないにゃ。人間界は魔界と違って色々と危険も多いしにゃ……それに、エノル様だって瑞希さまのことが心配だから厳しくするんじゃないかにゃ」
ファーラが瑞希の横に並び、宙を駆け走りながら言った。
「わあぁッ! フ、ファーラッ! ど、どこ走ってんのッ!?」
エノルに魔法を使うことは禁止されているのに、これじゃ明らかに違反である。
まして、こんなところを人間に見られたりしたら大変なことになるだろう。
「ああ、心配ないにゃ、瑞希さま。これは魔法じゃなくて精霊の特殊な力だにゃ。それに、我々精霊の姿は人間には全然見えないにゃ」
「えっ!? そ、そうなんだ……」
「まぁ、中には稀に見える能力を持っている人間もいるけどにゃ」
「ふぅーん」
改めて精霊の不思議な力を知った瑞希である。
「あっ! 駅だにゃ、瑞希さまっ。あそこから電車に乗るにゃ」
「よ、よしっ! 行くよっ、ファーラッ!」
「はいにゃっ!」
初めての電車に緊張しながらも、瑞希は朝のラッシュアワーの中に駆け込んでいった。
【To be continued】
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