麗しの小悪魔 第1話:謎の転校生《5》
そのまま駅のホームに降り立った瑞希は、再び走り出した電車を振り返るとただ呆然と見送ったのだった。
「い、行っちゃったよ……」
だんだんと小さくなっていくその電車を見つめながらぽつりとそう呟いた。
もうこうなったら、あのオジサンやお姉さんの誤解がちゃんと解けるのをただ祈るばかりである。
「……おい、大丈夫か?」
「えっ?」
突然、すぐ後ろからそう尋ねられて慌てて振り返ると、さっき電車の中で助けてくれたあの青年が不思議そうな顔をして瑞希の顔を覗き込んでいた。
「あ……!」
――…わ…ッ! う、うそぉっ!?
その青年の澄んだ茶褐色の瞳に見つめられて、瑞希はカァーッと林檎のように真っ赤になってしまった。
「……ったく。よかったな、あのオジサンに変なところに連れていかれなくて……」
「あ、あの……」
「ん?」
「さっきは……何で……何であんなこと言ったんですか?」
いちばん気になっていることをその青年に聞いてみた。
「あんなこと?」
「あ、あの……オジサンが触ってたのは……僕のほうだったのに……あのお姉さんのほうだった、って……」
「ああ、別に理由なんかないけどな。あのままお前を被害者にしておいたら、何かと面倒なことになるだろ?」
「面倒なこと?」
「あの状況じゃお前も俺も駅員や警察に事情を聞かれるだろうし、お前だって『痴漢に遭った少年』なんて言われて好奇の目に曝されるのは嫌だろ?」
「そ、そうなんだ……」
確かに、そんなことになったら非常に困ることになっていたかもしれない。
人間界のこともまだよく判らないのに、そんな事情なんて聞かれても多分答えられそうにない。
まして、『魔界の後継者』である第1王子が、人間界で痴漢に遭っていたなんてことが魔王である父上の耳にでも入ったら、ショックのあまり倒れて寝込んでしまうかもしれない。
色んな意味で、瑞希はこの青年に助けられたようだ。
「ちょうどあの時、あのお姉さんが運良くお前の隣にいて話に乗ってきたからさ……そういうことにして貰っちゃったんだけど……もしかして、迷惑だったとか?」
「えっ?」
「本当はあのオジサンと一緒に行きたかった、ってことか?」
「な、何言ってんのさッ! ち、違うよッ!」
瑞希がムキになって捲くし立てるのを、その青年が面白そうに見遣った。
「ふーん。まぁ、どうでもいいんだけどさ……」
何やらニヤニヤと意味有りげな表情だ。
「えっ?」
――…な、何だろ……? ぼ、僕の顔に何かついてるのかな……?
キョトンとした顔をしていると、青年が悪戯っぽい笑みを浮かべながら瑞希の股間を指差した。
「……だから……それ……ズボンのファスナーから出てるぞ」
「へ? ズボンの……ファスナー?」
慌てて見遣ると、いつの間にか制服のズボンのファスナーが全開になっていて、そこからプリリンッと可愛らしい瑞希の分身が飛び出していた。
「うぎゃあああ―――ッ!」
瑞希が悲鳴を上げて股間を隠したのと同時に、その青年も声を上げて笑い出した。
「あっはは、は……女の子みたいな顔してるからついて無いのかと思ったけど……ちゃんと顔に似合って可愛いやつがついてるんだな」
そう言いながら、その青年は再びお腹を抱えて笑い出した。
「わッ、わッ、わ―――ッ! 言うなッ無礼者ッ!」
そう怒鳴った瑞希の顔は、沸騰しきって今にも大爆発を起こしそうなヤカンのように真っ赤だ。
「無礼者ぉ? 何だよそれ、時代劇が好きなのか?」
「ち、違うって―――ッ! ぼ、僕は……」
魔界第三百二十四代魔王リヒャルド陛下の第1王子、『魔界の後継者』だ。
喉元までそう出係っていたけれど、エノルの恐い顔を思い出してそのまま呑み込んだ。
どうせ、こんなところでそんなことを言っても誰も信じないだろう。
「……ったく。色んな意味で面白い奴だな、お前」
「ふにぃいい――ッ! 面白くなんかないぞッ、無礼者ッ!」
ムキになればなるほど、身体中が激しく熱く鼓動を高鳴らせていく。
初対面の相手にあんな恥ずかしい姿を見られてしまって、瑞希は今すぐにでもどこかに隠れてしまいたい心境だった。
「そう言えば、お前って見かけない顔だけど……1年だろ?」
「え?」
「俺は2年の渋谷秀樹(しぶや・ひでき)だ……宜しくな」
【To be continued】
「い、行っちゃったよ……」
だんだんと小さくなっていくその電車を見つめながらぽつりとそう呟いた。
もうこうなったら、あのオジサンやお姉さんの誤解がちゃんと解けるのをただ祈るばかりである。
「……おい、大丈夫か?」
「えっ?」
突然、すぐ後ろからそう尋ねられて慌てて振り返ると、さっき電車の中で助けてくれたあの青年が不思議そうな顔をして瑞希の顔を覗き込んでいた。
「あ……!」
――…わ…ッ! う、うそぉっ!?
その青年の澄んだ茶褐色の瞳に見つめられて、瑞希はカァーッと林檎のように真っ赤になってしまった。
「……ったく。よかったな、あのオジサンに変なところに連れていかれなくて……」
「あ、あの……」
「ん?」
「さっきは……何で……何であんなこと言ったんですか?」
いちばん気になっていることをその青年に聞いてみた。
「あんなこと?」
「あ、あの……オジサンが触ってたのは……僕のほうだったのに……あのお姉さんのほうだった、って……」
「ああ、別に理由なんかないけどな。あのままお前を被害者にしておいたら、何かと面倒なことになるだろ?」
「面倒なこと?」
「あの状況じゃお前も俺も駅員や警察に事情を聞かれるだろうし、お前だって『痴漢に遭った少年』なんて言われて好奇の目に曝されるのは嫌だろ?」
「そ、そうなんだ……」
確かに、そんなことになったら非常に困ることになっていたかもしれない。
人間界のこともまだよく判らないのに、そんな事情なんて聞かれても多分答えられそうにない。
まして、『魔界の後継者』である第1王子が、人間界で痴漢に遭っていたなんてことが魔王である父上の耳にでも入ったら、ショックのあまり倒れて寝込んでしまうかもしれない。
色んな意味で、瑞希はこの青年に助けられたようだ。
「ちょうどあの時、あのお姉さんが運良くお前の隣にいて話に乗ってきたからさ……そういうことにして貰っちゃったんだけど……もしかして、迷惑だったとか?」
「えっ?」
「本当はあのオジサンと一緒に行きたかった、ってことか?」
「な、何言ってんのさッ! ち、違うよッ!」
瑞希がムキになって捲くし立てるのを、その青年が面白そうに見遣った。
「ふーん。まぁ、どうでもいいんだけどさ……」
何やらニヤニヤと意味有りげな表情だ。
「えっ?」
――…な、何だろ……? ぼ、僕の顔に何かついてるのかな……?
キョトンとした顔をしていると、青年が悪戯っぽい笑みを浮かべながら瑞希の股間を指差した。
「……だから……それ……ズボンのファスナーから出てるぞ」
「へ? ズボンの……ファスナー?」
慌てて見遣ると、いつの間にか制服のズボンのファスナーが全開になっていて、そこからプリリンッと可愛らしい瑞希の分身が飛び出していた。
「うぎゃあああ―――ッ!」
瑞希が悲鳴を上げて股間を隠したのと同時に、その青年も声を上げて笑い出した。
「あっはは、は……女の子みたいな顔してるからついて無いのかと思ったけど……ちゃんと顔に似合って可愛いやつがついてるんだな」
そう言いながら、その青年は再びお腹を抱えて笑い出した。
「わッ、わッ、わ―――ッ! 言うなッ無礼者ッ!」
そう怒鳴った瑞希の顔は、沸騰しきって今にも大爆発を起こしそうなヤカンのように真っ赤だ。
「無礼者ぉ? 何だよそれ、時代劇が好きなのか?」
「ち、違うって―――ッ! ぼ、僕は……」
魔界第三百二十四代魔王リヒャルド陛下の第1王子、『魔界の後継者』だ。
喉元までそう出係っていたけれど、エノルの恐い顔を思い出してそのまま呑み込んだ。
どうせ、こんなところでそんなことを言っても誰も信じないだろう。
「……ったく。色んな意味で面白い奴だな、お前」
「ふにぃいい――ッ! 面白くなんかないぞッ、無礼者ッ!」
ムキになればなるほど、身体中が激しく熱く鼓動を高鳴らせていく。
初対面の相手にあんな恥ずかしい姿を見られてしまって、瑞希は今すぐにでもどこかに隠れてしまいたい心境だった。
「そう言えば、お前って見かけない顔だけど……1年だろ?」
「え?」
「俺は2年の渋谷秀樹(しぶや・ひでき)だ……宜しくな」
【To be continued】
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■SHINOBI―忍―














