SHINOBI ―忍― 《3》

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「俺が嬉しくてピーピー泣きはじめちゃったら、銀牙もつられて泣きだしちゃってさぁ……あの頃は銀牙もそりゃー素直でとーっても可愛かったのになぁ……」
「……おい、その位にしとけよ。疾風」
「へ?」
徐々に刻まれていく銀牙の眉間の皺に気づいた疾風が、慌てて口をつぐみながら頭を掻いた。
「あはは……そ、そうか? 何だよ、やだな。じ、冗談だって冗談っ!」
「……ふんっ」
不機嫌そうに赤くなった銀牙によって、疾風の思い出話にはそのまま終止符が打たれたのだった。
「……で、翁。『風林火山宝玉書』を狙ってるのが何者なのか、正体は判ってるのか?」
「うーむ、それがのう……」
銀牙のその問いに、藤十郎がいつになく言葉を濁した。
「あらかじめ東京に送り込んでおいた者たちの情報からも、未だはっきりとしたことは判っておらんのじゃよ」
「そうか……」
「ちえっ、何だよそれ。頼りになんねぇな」
疾風が、呆れたようにやれやれと肩を竦めた。
「まぁ、そう言うな。とにかく、何者かが春乃姫様に纏わる事柄や子孫の行方を探っているようなのじゃよ。それだけなら未だしも、古美術商や骨董業界の裏と表にも探りを入れているらしいのじゃ」
「それって……?」
「うむ、狙いはおそらく『風林火山宝玉書』じゃろ」
藤十郎は白髪の顎髭を撫でながら、鋭い眼差しをより細めた。
しかし、東京に送り込まれている者たちは一族の中でも若手の精鋭揃いの筈だ。
それが、相手の素性もまったく探れないということは、何かとてつもない“存在”ではないだろうか。
「取り敢えずは、すぐに情勢が動くということではないじゃろうが、儂にはどうも嫌な気配がしてならんのじゃよ。じゃから、こちらも動くことに決めたのじゃ」
「おいおい、じいちゃん。決めたのじゃ……って言われてもなぁ。それで、俺たちは東京のどこへ行って誰を護衛すればいいわけ?」
いきなり東京へ行って身辺警護をしろ、と言われても何が何だかさっぱり話が見えてこない。
「そのことじゃがな、細かいことはみんなあっちの部隊に任せてある」
「へ? 任せて……ある?」
「うむ。お前たちにはのう、東京の学校へ通って貰うのじゃよっ!」
「はぁぁッ!?」
「が、学校ッ!?」
疾風と銀牙は、呆気にとられて思わず驚きの声を上げてしまった。
「こんな僻地の分校じゃ十分な授業も受けられないようじゃからな……いい機会じゃ、しっかり勉強もしてくるんじゃぞっ!」
「な、何だよそれ……じ、冗談じゃねぇぞっ!」
「はっはっはっ……女子高生にコンビニやケータイ。羨ましいのう、儂が代わってやりたいくらいじゃ」
藤十郎が、まるで揶揄するように皴枯れた笑い声を上げた。
身辺警護のついでに、ふたりの成績のほうも向上させようという狙いらしい。
まったく、本当に食えない老人だ。
「な、何だよそりゃッ! 全然訳わかんねーじゃんかッ!」
その時、疾風の感嘆の悲鳴が緑の深い秘境の郷に響き渡ったのは言うまでもない…―――。
【SHINOBI ―忍― プロローグ・終わり】
【To be continued】
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