暖かい場所
暖かい場所 〜胸騒ぎの放課後シリーズより〜
「うわぁッ、雪降ってきちゃったよぉ」
神谷千尋(かみや・ちひろ)は、制服の上に着た薄茶色のダッフルコートの襟にマフラーをしっかりと巻きながら、北風の吹いているどんよりと曇った空を見上げた。
お昼休みぐらいから降ってきそうな雰囲気だったのだが、縒りによって下校時間に降ってくるなんて何だかついてない。
「もぉ、遅いなぁ……勇樹ってば。何やってんだろ?」
千尋は一緒に帰る筈のクラスメート、柏原勇樹(かしわばら・ゆうき)が職員室から戻ってくるのを底冷えのする昇降口で震えながら待っていた。
勇樹とは家が隣同士の幼なじみで、物心ついた頃から兄弟のように育った無二の親友である。
小柄で可愛らしく何事も平凡な成績の千尋とは対照的に、勇樹は180cmに届く長身で、勉強もスポーツも学年トップクラスの成績の持ち主だ。
千尋にとっては、幼い頃からピンチの時に必ず現れて助けてくれる正義のヒーローか頼りになるお兄ちゃんみたいな存在でもある。
高校1年生になった現在でも、ふたりの関係は相変わらずのものだった。
「おーぃ、千尋っ。わりぃわりぃ」
「あ、勇樹。遅いよ、もぉ」
やっと戻ってきた勇樹と一緒に、口唇を尖らせたままの千尋は昇降口を後にした。
「傘差さなくても、まだ大丈夫そうだね」
「だな、今のうちに帰っちまおうぜ」
「何だったの?松島先生の話って」
「あぁ、明日の授業のことだよ。松島が出張でいないから自習なんだとさ。プリント預かって教室に置いてきた」
「ふぅん、でもさぁ、そんなの委員長にでも言えばいいじゃん」
「委員長は風邪で休んでんだろ」
「あ、そっか」
そんな他愛のない会話をしながら並んで歩いていると、本当に長い間こうやって勇樹と一緒に歩いてきたんだなぁ、と改めて実感してしまう。
「千尋、手出してみ」
「え?」
いきなりそう言われて素直に右手を差し出すと、勇樹の左手に握り返されて手を繋ぐ。
「ち、ちょっ……ゆ、勇樹ッ!こ、こんなとこで手なんか繋いで帰るなんて恥ずかしいよッ」
「いいから」
「え?」
慌てて振り解こうとする千尋の右手を、勇樹の大きくて暖かい左手が優しく包み込んだ。
「あそこ寒かったんだろ?こんなに冷たくなってんじゃんかよ」
「う、うん。それはそうだけどさ……」
何故だか急に顔が熱くなってきて、勇樹の顔をまともに見ることもできそうになかった。
そして、勇樹は繋いだ手を更に自身のダウンジャケットのポケットの中に滑り込ませた。
「わッ!ち、ちょっと……」
伝わってくる暖かいぬくもりに、ほっと心が安堵する。
「ほら、こうしてればふたりで一緒に暖かくなるだろ?マジで俺って天才だな」
「ふ、ふんっ……馬鹿じゃないの」
「寒い時は呼んでくれ。千尋限定で暖めてやるからさ」
そう言って笑う勇樹の手がいちばん暖かいことに、やっと気づいた今日この頃。
勇樹の隣がいちばん暖かい場所なのかもしれない。
【END】
ラブラブです(笑)。
メールマガジン『NEOBLAND通信 NO.14』読みきり短編小説より
「うわぁッ、雪降ってきちゃったよぉ」
神谷千尋(かみや・ちひろ)は、制服の上に着た薄茶色のダッフルコートの襟にマフラーをしっかりと巻きながら、北風の吹いているどんよりと曇った空を見上げた。
お昼休みぐらいから降ってきそうな雰囲気だったのだが、縒りによって下校時間に降ってくるなんて何だかついてない。
「もぉ、遅いなぁ……勇樹ってば。何やってんだろ?」
千尋は一緒に帰る筈のクラスメート、柏原勇樹(かしわばら・ゆうき)が職員室から戻ってくるのを底冷えのする昇降口で震えながら待っていた。
勇樹とは家が隣同士の幼なじみで、物心ついた頃から兄弟のように育った無二の親友である。
小柄で可愛らしく何事も平凡な成績の千尋とは対照的に、勇樹は180cmに届く長身で、勉強もスポーツも学年トップクラスの成績の持ち主だ。
千尋にとっては、幼い頃からピンチの時に必ず現れて助けてくれる正義のヒーローか頼りになるお兄ちゃんみたいな存在でもある。
高校1年生になった現在でも、ふたりの関係は相変わらずのものだった。
「おーぃ、千尋っ。わりぃわりぃ」
「あ、勇樹。遅いよ、もぉ」
やっと戻ってきた勇樹と一緒に、口唇を尖らせたままの千尋は昇降口を後にした。
「傘差さなくても、まだ大丈夫そうだね」
「だな、今のうちに帰っちまおうぜ」
「何だったの?松島先生の話って」
「あぁ、明日の授業のことだよ。松島が出張でいないから自習なんだとさ。プリント預かって教室に置いてきた」
「ふぅん、でもさぁ、そんなの委員長にでも言えばいいじゃん」
「委員長は風邪で休んでんだろ」
「あ、そっか」
そんな他愛のない会話をしながら並んで歩いていると、本当に長い間こうやって勇樹と一緒に歩いてきたんだなぁ、と改めて実感してしまう。
「千尋、手出してみ」
「え?」
いきなりそう言われて素直に右手を差し出すと、勇樹の左手に握り返されて手を繋ぐ。
「ち、ちょっ……ゆ、勇樹ッ!こ、こんなとこで手なんか繋いで帰るなんて恥ずかしいよッ」
「いいから」
「え?」
慌てて振り解こうとする千尋の右手を、勇樹の大きくて暖かい左手が優しく包み込んだ。
「あそこ寒かったんだろ?こんなに冷たくなってんじゃんかよ」
「う、うん。それはそうだけどさ……」
何故だか急に顔が熱くなってきて、勇樹の顔をまともに見ることもできそうになかった。
そして、勇樹は繋いだ手を更に自身のダウンジャケットのポケットの中に滑り込ませた。
「わッ!ち、ちょっと……」
伝わってくる暖かいぬくもりに、ほっと心が安堵する。
「ほら、こうしてればふたりで一緒に暖かくなるだろ?マジで俺って天才だな」
「ふ、ふんっ……馬鹿じゃないの」
「寒い時は呼んでくれ。千尋限定で暖めてやるからさ」
そう言って笑う勇樹の手がいちばん暖かいことに、やっと気づいた今日この頃。
勇樹の隣がいちばん暖かい場所なのかもしれない。
【END】
ラブラブです(笑)。
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■SHINOBI―忍―














