危険なTWINS《1》

♪OPイメージテーマ曲を聴く
危険なTWINS《1》
爽やかな朝―――。
なぜか気持ちまでリフレッシュ出来るような気がするから不思議だよねっ。
しかーしっ!
この僕―――篠原皐月(しのはら・さつき)17歳は、毎日とってもセレブでハイテンションな家族たちに囲まれて、とってもエキサイティングな朝を迎えているのでした。
まず、制服に着替えてから白い大理石の大階段を降りて1階のリビングルームへ向かう。
「おはよっ、いいお天気だねっ、パパ」
リビングの隣にあるダイニングテーブルに座って新聞を拡げているパパに笑顔で朝の挨拶をするんだ。
「おぉっ! おはよう、皐月っ。今日もママに似てとーっても可愛いぞっ!」
「ぎゃあぁ──ッ!」
いきなり駆け寄ってきたパパにギュウッと抱き締められて、僕は傍にあった時価1千万円の花瓶でパパの頭を叩きつけた。
「う…ッ!」
何で毎朝毎朝このオヤジはこうなのだろうか。
「はぁ、はぁ…あ、あれ? パ、パパ? 大丈夫?」
床に倒れているパパが心配で恐る恐る顔を覗き込むと、このオヤジは嬉しそうに微笑んでいたのだ。
僕のテンションが一気に下がる。
「ははは、まったくしょうがないな、皐月は。オテンバ娘なんだから」
「……あのぉ、僕…男の子なんですけど…」
なんて油断してると、再びじりじりとパパの顔が迫ってくる。
「さぁ、可愛い皐月。パパにお早ようのキスしてくれるだろ?」
「ダメッ! ダメーッ! ここは日本ッ! きゃあぁ──ッ!」
5年前まで殆どアメリカで暮らしていたせいか、パパのこの習慣が抜けなくて困っているんだ。
咄嗟に、僕は再び純金の置時計でパパの頭を殴りつけていた。
「うわ…っ、パパッ! しっかりしてっ!」
またやっちゃったよぉ。
「……ふふ、ずいぶん楽しそうだね」
いきなりキッチンからエプロンをした綺麗な青年が、トレイにトーストやサラダ、ハムエッグなどを乗せて出てきた。
「あ、純也くん。おはよっ」
美味しそうないい匂い。
「お早よう。さぁ、早く朝ご飯食べて学校に行かないと遅刻だよ」
「えぇ─ッ! もうそんな時間っ!?」
僕はなぜかちょうど手に持っていた純金の置時計で時間を確認した。あと二十分しかない。
「大変だあぁ──ッ!」
慌ててテーブルに座ると、急いでトーストに噛りついた。
「こらこら、皐月。喉に詰まるからもっとゆっくり食べなさい」
この変なイケメンオヤジが僕達のパパ、篠原暁(しのはら・あきら)。
43歳で有名ゲームソフト会社の社長さんをやってるんだ。
僕が言うのも何だけど、仕事が出来てカッコよくて、女の人にもかなりモテてしまう。
まぁ、それが原因でママが出ていってしまったのは事実だけどね。
その後、ママのことをそれはそれは愛していた傷心のパパが何を言い出すのかと思ったら、『もう決してママ以外の女性は愛さない。浮気をするなら男と!』って宣言したんだ。
ママの神経を逆撫でるとしか思えないこの決意に僕たちは言葉がなかったけど、パパは今日もママが帰ってきてくれると信じて待っているのだ。
「皐月くん、お弁当ここに置いとくよ」
「あ、サンキュ、純也くん」
次に、このエプロン姿のお兄さんは佐野純也(さの・じゅんや)さん、26歳。
家事を何でもこなすハウスキーパー、つまりうちの優秀な住み込みの家政婦さん。
パパのあの決意で、女人禁制になってしまったこの家のすべてを管理してくれている人だ。
綺麗な人だし、パパは相当気に入ってるみたいだけど、ママはかなり誤解しているみたい。
でも、僕は何でも相談できる頼りになるお兄ちゃんみたいで大好きなんだけど。
それにしてもこの人、詳しい素性だけはサッパリ判らないんだ。何か理由ありなのかな。
「わぁーんっ! 皐月のイジワルっ! 何で起こしてくれないのさッ!」
それから、やっと起きてきたこの僕にそっくりなのが、双子の弟・篠原睦月(しのはら・むつき)。
僕らは私立桜琳学園に通う17歳の高校2年生なんだ。ふたりとも2ーBで同じクラスだから、学校へ行ってもこの騒々しい睦月とは一緒なんだよねぇ。
「何で自分だけさっさと起きて朝ご飯してんのさっ、信じらんないッ!」
「睦月が起こすなって言ったんじゃん」
「そんなこと言ってないってば」
「言ったよッ」
と、いつもこんな感じで仲がいいのか悪いのかよく判らないんだ。
「……ったく、朝っぱらから元気だねぇ」
そして、白いバスローブのまま二階から降りてきた、この見るからに『ホスト顔』のお兄さんは篠原桂(しのはら・けい)―――僕らのお兄ちゃんだ。
僕らより3歳年上の20歳で、凌南大学の2年生だけど銀座の『メフィストフェレス』っていう会員制のホストクラブでバイトをしてる。将来は医師になるか、起業家になるかまだ迷ってるみたいだけどね。
とりあえず、この家で暮らしているのは僕を入れてこの5人かな。
僕らの家は、都内の閑静な高級住宅街に建っているんだ。
白い洋館造りの3階建てで、3階フロアはパパとママのスゥイートルームとゲストルームがある。そして2階は僕らとお兄ちゃん、純也くんのそれぞれのプライベートルーム。
1階は、リビングルームやダイニングキッチンなどの生活圏、そして地下はガレージ兼倉庫なんかになっている。
その他に芝生の庭もあったりして、アメリカに住んでいた時の家にちょっと似ているんだ。
でも、かなり広いから純也くんのお掃除が大変だと思うよ。
「どうしたんですか、暁さん?元気がないですけど」
さっきからガックリと肩を落としているパパに、コーヒーを入れながら純也くんが尋ねた。
「ははは…、皐月も睦月もお早ようのキスをしてくれなくなっちゃったんだよ。ふたりとも小さい頃は毎朝競い合うようにしてくれたのになぁ…」
本気で落ち込んでるよ、このオヤジは。
「なんだぁ、そんなことならこの僕が」
「えぇ───ッ!」
一同が思わず叫んだ。
それって凄くヤバイんじゃないのかなぁ。
「じゅ、純也くん? あ、あの……」
しかし、既に遅かった。
「お早ようございます、暁さん」
「うん、お早よう」
チュッと音が聞こえてきそうなマウス・トゥ・マウス。
僕たちの目の前で、ハートマークに囲まれた新婚夫婦のような光景が繰り広げられた。
ああ、もう僕は何が起っても知らないぞ。
「……とても素敵な朝ねぇ、あ・な・た」
いきなり僕の背後から、冷ややかな女の人の声がした。
「げっ! マ、ママッ!」
振り返るとそこにはモデルさんのように綺麗な女の人が、憤怒の表情で仁王立ちになっていた。
この女の人が篠原佳菜子(しのはら・かなこ)、僕たちのママだ。
輸入ランジェリー会社の社長さんをしているママは、41歳には見えない若づくりな女性なんだ。パパの女性問題が原因で別居してから、うちの向かいの4LDKのマンションに住んでいる。
家事がまるで駄目なママもかなり純也くんのお世話になっていて、1日1回は必ずこっちの家に来ることになっているんだ。
ほとんど意味のない別居なんだけど、僕が思うにふたりはとても愛し合っているんじゃないかなぁ。
でも、よりによってこんな時にママが来ちゃうなんて。あぁ、神様。
「あ、お早ようございます、佳菜子さん」
「やあ、お早よう、ママ。どうしたんだい? そんな恐い顔して?」
僕たちがハラハラしながら見守っていると、パパと純也くんはまるで何事もなかったかのように、ニッコリとした笑顔をママに向けた。
なんて命知らずな人たちなんだろう。
「あなたたち…やっぱりそういう関係だったのね」
ママのこめかみがピクピクと痙攣している。
ヤバイ、非常にヤバイ。
「え? 関係? はい、ご主人さまと使用人でぇす」
「そうそう、たまに奴隷になるんだよな」
「あーなーたッ!」
「ぅわ…ッ、マ、ママッ! そ、そんなに怖い顔したら……せっかくの美貌が……ッ!!」
「あなたに『ママ』なんて呼ばれる筋合いはありませんッ!」
「ぅわあぁぁ―――ッ!」
パパの叫び声とともに、ママのスーパーラリアットが決まった。
ああ、またはじまっちゃったよ。
僕が溜息を吐いたのと同時に、玄関のチャイムが鳴った。
【To be continued】
●ブログランキング&検索エンジン● |




■SHINOBI―忍―














