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歴史/学園ファンタジー/ボーイズラブ小説『SHINOBI―忍―』 ■SHINOBI―忍―

時は現代―――。
武田信玄公のもとで活躍した忍びの末裔・疾風と銀牙は、何者かが狙っている『風林火山宝玉書』と、信玄公の御側室・春乃姫の末裔・香田翔という高校生を守るために東京へと向かった!? 歴史/学園バトルファンタジーBL!?
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ライト感覚のBL小説&漫画制作工房ブログです。ボーイズラブ・メンズラブ・JUNE・やおい・ショタ満載。甘切ほのぼの系からちょいH系まで幅広ジャンル。学園・ファンタジー・歴史・年の差・業界・リーマンなどなど。その他アニメ話や各種雑記有。

メフィストフェレスの恋人たち《9》


メフィストフェレスの恋人たち
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「人様の店の前で何やっとるんじゃいッ!」

 そのお婆さんの迫力ある一喝に、沙樹たち三人はぴたりと動きを止めた。
「あ、あの……」
「す、すみません……」
「ごめんな…さい……」
 蚊の鳴くような小さな声で恐る恐る謝ると、そのお婆さんは細い目をより細めてニヤリと笑った。
「ほっほっほっ……分かればいいんじゃよ。今どきの若いのには珍しく、謝るっていうことを知っとるらしいのう。しかし、一体どうしたんじゃい、モモエさん?」
「いえいえ。お騒がせしちゃってすいませんね、社長」

「え? 社長?」

 その「モモエさん」と呼ばれたパートのおばちゃんとの何気ない会話の中に、驚くべき事実を発見してしまった沙樹たち三人が目を丸くして飛び上がった。
「ひぇっ!? し、社長っ!?」
「う、うそぉっ!?」
「こ、この婆さんがッ!?」
 その場に佇んでいた三人も思わず声を上げてしまった。
 この年季の入ったお婆さんが、何を隠そうこの『仲村屋』の社長だったのである。
「――…実は、このお兄ちゃん達がうちの栗あんパンを買いにきてくれたみたいなんですけどね、生憎と全部売り切れてしまって……」
「ほう、うちの栗あんパンをねぇ……」
 パートのモモエおばちゃんにそう話を聞くと、『仲村屋』の女社長は再び目を細めて笑った。
 本当にこのお婆さんが『仲村屋』の社長なら、トップの権限で栗あんパンを何とかしてくれるかもしれない。
「あ、あの……っ!」
 沙樹は、藁にも縋る思いで口を開いた。
「ん? 何じゃね?」
「あ…あのっ……栗あんパンなんですけど……ひとつかふたつでもいいから残ってませんかっ!?」
 もしかしたら、という思いが沙樹を突き動かしていた。
「こりゃすまんのう。生憎とうちは毎日決まった個数しか焼かないことにしとるんじゃ。それに、全部店頭に出しとるからのう……店頭でなくなった時点で売り切れなんじゃよ」
「そ、そんな……」
 結局、沙樹の思いも虚しく本日の栗あんパンは完全に売り切れてしまったのだ。
 しかし、どうしてもまだ諦め切れない。
「じ、じゃあ……パ、パティシエさん……パティシエさんに会わせて下さいッ!」
「な、何じゃ? パ……テシエさん?」
「はいッ! お願いしますッ! 栗あんパンを焼いているパティシエさんに是非会わせて下さいッ!」
 一か八か、これが最後のチャンスだ。
 実際に栗あんパンを焼いているパティシエなら、こんなに栗あんパンを必要としている熱心なお客さんにもう一度焼いてくれるかもしれない。
「お、おいっ、諏訪野っ! もう止めとけって……」
「そうだよ、沙樹くんってばっ! 売り切れちゃったものはどうにもなんないんだからさ……明日また来ようよっ!」
 成り行きを見守っていた真琴と健吾が、思わず沙樹を止めようとした。
「ゴチャゴチャうるさいんですよっ、ふたりともっ! いいから黙ってて下さいっ! 僕は……ここまで来て諦められないんですってばっ!」
「な、何――っ!」
「何だよっ、その言い草はっ!」
 再びはじまりかけた三人の言い合いに、更に再び女社長の一喝が轟いた。

「喧嘩するんなら、どっか他に行ってやっとくれッ!」

 これには、さすがの沙樹たち三人も借りてきた猫のように大人しくなってしまった。
「す、すみません……」
「面目ない……」
「もうしません……」
「やれやれ、仲が良いんだか悪いんだかよく分からんお兄ちゃん達じゃなぁ。しかし、何じゃ……テシエだかハツエだかよく分からんが、そんな人はうちにはおらんよ」
「え!? パティシエさんはいないんですか?」
 沙樹は思わず声を上げてしまった。
 頭の中で思い描いていたような超一流のパティシエが存在しないということは、一体誰があの素晴らしい栗あんパンの味覚を生み出しているのだろうか。
「じ、じゃあ、栗あんパンを焼いてるのは……誰なんですかっ!?」

「ああ、栗あんパンを焼いてるのは、この私……ヨシエじゃよ」

 そう言いながら、『仲村屋』の女社長は皴だらけの顔でニッコリと笑った。

「ひえッ!? ヨ、ヨシエッ!?」

 沙樹たち三人は、ヨシエ社長の顔を見つめたまま呆然と立ち竦んでしまった。

 『仲村屋』の栗あんパンを毎日焼いていたのは、『パティシエ』ならぬ『ヨシエ』だったのである。


【To be continued】

メフィストフェレスの恋人たち《8》


メフィストフェレスの恋人たち
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「はい、ごめんなさいよ。今日の栗あんパンはこれで終わりでーすっ!」

「げ……っ!?」
「マ、マジかよッ!?」
「う、うそぉ……っ!?」

 長蛇の行列に延々と並んだ結果、ちょうどふたり前の女子高生のところでお約束の緊急事態が起こってしまった。
「う、売り…切れ……っ!?」
 沙樹たち三人は呆然としたまま、パートのおばちゃんの顔をただじっと見つめるしかなかった。

『本日の栗あんパンは売り切れました』

 大きくそう書かれたビラがお品書きの中央に貼られて、空になった栗あんパンのトレイが奥の厨房へと下げられてしまった。
「そ、そんな馬鹿なッ! 栗あんパン……栗あんパン……ひとつかふたつ残ってないんですかッ!?」
 もしかしたら、と僅かな希望を抱いた沙樹がパートのおばちゃんに勢い良く食いついた。
「そ、そう言われてもねぇ……今日は全部売り切れちゃったんだよ。悪いんだけどね、明日また来てくれるかい? 本当にごめんね」
「そ、そんな……」
 やっとここまで来たというのに、これじゃ本当にただの徒労に終わってしまう。
「仕方ないじゃん。明日また出直すか、諏訪野?」
「冗談じゃありませんよっ! ぼ、僕が今日何の為にここへ来たと思ってるんですかっ!」
「そ、そんなこと言ったってさ……」
 店の真ん前で言い合いをはじめた沙樹と健吾のふたりを、今回は珍しく真琴が止めに入ったのだった。
「ち、ちょっと……止めなよ、ふたりとも」

 その時…―――。

「何やってるんじゃッ、お兄ちゃん達ッ!」

 突然、店の奥から皴枯れた声が聞こえた。
「へ……っ!?」
 驚いた三人が慌てて厨房の入口のほうを振り返ると、これまた建っている店舗と同じくらい年季の入ったお婆さんが立っていた。


【To be continued】

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