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歴史/学園ファンタジー/ボーイズラブ小説『SHINOBI―忍―』 ■SHINOBI―忍―

時は現代―――。
武田信玄公のもとで活躍した忍びの末裔・疾風と銀牙は、何者かが狙っている『風林火山宝玉書』と、信玄公の御側室・春乃姫の末裔・香田翔という高校生を守るために東京へと向かった!? 歴史/学園バトルファンタジーBL!?
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ライト感覚のBL小説&漫画制作工房ブログです。ボーイズラブ・メンズラブ・JUNE・やおい・ショタ満載。甘切ほのぼの系からちょいH系まで幅広ジャンル。学園・ファンタジー・歴史・年の差・業界・リーマンなどなど。その他アニメ話や各種雑記有。

飛鳥繚乱-白梅の章-《5》


飛鳥繚乱
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 どうやら今の話を隣室で偶然聞いてしまったらしい。
「河勝殿の言う通りです。兄上は皆が言っているような御方ではありません。私たち皆のことを考えて下さっている心の優しい御方です!」
 来目皇子はまだ幼さの残る口唇を震わせながら、皆の前ではっきりとそう言った。
「母上、お願いですから皆の噂話など信じないで……兄上のことをもっとちゃんと見てあげて下さい」
「来目……」
 涙に濡れた顔を上げて、穴穂部間人皇女は目の前の我が子を見つめた。
「憶えていますか? 私がもっと小さい頃から兄上はよく遊んで下さいました。馬に乗せて貰って一緒に散策したり、川で魚を追って水遊びをしたり……私達と何も変わらないのに……あんな噂が………でも、誰が何を言おうと、兄上は私の兄上です」
 来目皇子は、ゆっくりと穴穂部間人皇女の前に跪くと静かにその手を取った。
「だから、母上がそんなことを言ったら……私は悲しくなってしまいます。私たちは家族なんですから……そうですよね、母上?」
 その胸が熱くなるような思いを聞いて、穴穂部間人皇女は再び涙を流した。

「……来目………母を……母を許して下さい…ッ。こんな弱い母を……どうか許して下さい……ッ!」

 母としての後悔と自責の念。
 周囲の風評に惑わされて、我が子を信じることが出来ない疎かな母になるところだった。
 来目皇子も、厩戸皇子も穴穂部間人皇女にとってはかけがえのない我が子―――かけがえのない家族である。
 皇女はその小さな手を優しく両手で握り返した。
「もう泣かないで……母上。ほら、河勝殿に笑われてしまいますよ」
 まだ幼い我が子にそう諭されて、穴穂部間人皇女は溢れて止まない涙を拭った。

「来目さま……」

 すぐ傍らに控えていた河勝も、来目皇子の講釈には思わず舌を巻いてしまった。
 今年五歳になったばかりとは思えないくらいしっかりしたお考えを持っている上に、物怖じすることなく堂々としている。
 そして、他を思いやる優しい心までも持っていた。
 まったく、弟君の来目皇子も噂に違わない皇子であった。
「河勝殿」
「は……はッ!」
 突然名を呼ばれて、河勝は慌ててその場で深々と頭を下げた。
「其方の前でこのような見苦しい姿を見せてしまって……どうか許して下さい」
「そ、そんな……勿体ないお言葉です、穴穂部間人様。どうか、この私に出来ることがあれば何なりとお申しつけ下さい」


【飛鳥繚乱-白梅の章-/続く】

飛鳥繚乱-白梅の章-《4》


飛鳥繚乱
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「な、何を言われるのですか!?」
「本当のことなのです、河勝殿。まだ幼い童だというのに……他の大人を……私を見るあの子の眼が……まるで宇宙の真理をすべて悟っているような気がして……心の裏側まですべてを見透かされているような気がしてとても恐ろしいのです」
「ま、まさか……思い過しではないのですか?」
「いいえ。赤子の時からすっと見ている我が子だから分かるのです。しかし……今はもう……あの子が何を考えているのかも分からなくなってしまいましたが……」
 そう言って、穴穂部間人皇女はその場に泣き崩れた。
「新しい屋形が建ってからというものは……他の者もますます寄せつけなくなり、ずっと屋形に籠もったままで……私達の前に姿も見せなくなってしまったのです。あの子は……私達を嫌っているのでしょうか? 何をしているのか……何を考えているのか……どんどんあの子のことが分からなくなってきて……今では……あの子は……厩戸は……私の子ではないのではないかとさえ思ってしまう……!」

「な、何を言われるのですか! そのようなことなど……有る筈がありませ……」

「いいえ! きっとそうに違い有りません……ッ! 私の所為です……私があのような夢を見た所為です……っ! 私が……私が身籠ったのは……あの夢の中の……恐ろしい妖魔の子だったのですッ!」

 顔を上げた穴穂部間人皇女は溢れ出る涙を拭いながら啜り泣いた。
「穴穂部間人さま……」
 我が子を案ずるあまりに、感情の昂ぶりを押さえきれない皇女の心中が河勝にも痛いほど分かる。

 その時…―――。

「もう止めて下さい、母上っ!」

 側近や采女たちと一緒に隣室に移っていた来目皇子が飛び込んできた。

「来目さま!」

 河勝が驚いていると、隣室に一緒にいた側近や采女たちも心配そうな顔をして来目皇子を引き止めながらついてきた。
「く、来目さま……お待ち下さい!」
「いけませぬ……皇子ッ」
「いいから……放して下さいっ!」
 幼い頬を紅潮させて、大きな瞳には真珠のような涙を浮かべながら、来目皇子は穴穂部間人皇女の前に歩み出た。
「もう止めて下さい、母上っ! なぜそんなことを言われるのですか?」
「来目……」
 どうやら今の話を隣室で偶然聞いてしまったらしい。
「河勝殿の言う通りです。兄上は皆が言っているような御方ではありません。私たち皆のことを考えて下さっている心の優しい御方です!」


【飛鳥繚乱-白梅の章-/続く】

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